WeWork問題のまとめ。ソフトバンクとの関係、上場延期、赤字の内訳などオフィス運営事業者がわかりやすく解説します

METS運営責任者ブログ

目次 -Table of Contents-

レンタルオフィス「METSオフィス」運営責任者のオバタです。

ソフトバンクグループが総額約2兆円の投資を行っているシェアオフィスサービス「WeWork(ウィーワーク)」の件、オフィスサービス運営責任者として私なりに調べた結果を皆様にシェアさせていただきます。

特にWeWorkのオフィスサービスに魅力を感じてこれから借りようとしている方、既に入居していて移転を検討している方などには目を通していただきたいです。参考までにどうぞ。

※ドル→日本円表記は当記事公開時のものです。

時価総額5兆円?WeWork(ウィーワーク)のビジネスモデルとは

WeWorkは2010年創業のオフィスサービス事業で、ビジネスモデルは「ビルオーナーからフロアを借りて内装工事でオシャレにして又貸しする(サブリース)」というものです。基本的な仕組みは既存の転貸によって運営されているレンタルオフィスやシェアオフィスなどと同じです。

なるべく立地条件が良く見栄えも良い不動産を選んで借りているようなので、場所を用意するだけでもかなりのコストがかかっているのは間違いありません。29カ国に500以上、日本には約20の拠点を構えており(※当記事公開時点)、驚異的な速度で資金調達を行い事業を拡大してきました。

拠点契約からオープン、損益分岐点まで16ヶ月|WeWork「S-1」

規模的に競合は世界で大規模展開しているリージャスくらいですが、成長速度だけなら世界トップレベルのオフィスサービス事業と言えるでしょう。特徴的なのは新規拠点立ち上げから損益分岐点に到達するまでの速度で、資料では拠点となる物件の契約から10ヶ月、オープンから損益分岐点までは6ヶ月で到達すると公表されていました。

圧倒的な速度で成長してきたWeWorkですが、キャッシュフローに問題を抱えたまま展開し続けたことにより上場の機会を自ら潰すことになり、企業の価値である時価総額を大幅に下げてしまう事態にも発展してしまったのです。

年間約2,000億円の赤字発覚。上場の無期限延期と時価総額の暴落

資料「S-1」内・ロゴページ|WeWork

WeWorkは米ナスダック上場による新たな資金調達を見据え、2019年8月14日にアメリカの証券取引委員会に証券登録届出書「S-1」を提出しました。

ところがこの資料で2018年の赤字額は約2,000億円であったことや2019年上半期の純損失計上が約980億円であったことなどが明らかになり、約5兆円とも言われていた時価総額は半分以下の約2兆円に暴落。(なお、イギリスの経済紙であるフィナンシャル・タイムズは時価総額は3,000億円が適正だと見積もっています)

ほどなくして創業者であるアダム・ニューマン氏は薬物使用疑惑など様々な問題(※後述)が取り沙汰されCEOを辞任。WeWorkを運営するWe社は米ナスダック市場への新規株式公開(IPO)を撤回、上場が無期限延期となったため、IPOによる当面の資金繰りが出来なくなったWeWorkは一転して破綻の危機に直面することになりました。

WeWorkはこの時点で金融支援を受けなければ翌月にも資金が枯渇しかねない状況で、2019年1月に470億ドル(約5兆円)と評価された時価総額はソフトバンクグループが提示した救済策により実質約8700億円と大きく値を下げてしまいました。

このような状況になってしまった以上、再度上場を狙うとしたらソフトバンクグループの投資に見合った回収ができるタイミングになってくると予想されます。あまりにも大きな暴落なので、少なくとも当面の間は損切り目的でもない限り上場の話は出てこないのではないでしょうか。

WeWorkの時価総額は不当に高い評価を受けていた?

以前から「ただの又貸しシェアオフィス事業に5兆円の価値はない」という声が根強くありましたが、WeWorkが上場のために用意した資料「S-1」の情報によりそれが明らかになったと言えるでしょう。

ReCodeが調査した競合であるリージャスとの比較を見れば一目瞭然です。

Metric WeWork IWG(リージャス)
拠点数 29か国
111都市
528箇所
120か国
1000都市
3000~
メンバー数 50万人 250万人
2018年利益損失 マイナス約2,069億円 プラス544億円
時価総額 約5兆円(※2019/1時点) 約4千億円

ビジネスモデル的に不動産事業であるのは明白なのにテック系扱いで不当な評価を受けていた点や、ソフトバンクグループが頻繁に行っている投資による時価総額の釣り上げなどが要因として挙げられることが多いようです。「ユニコーン」と呼ばれる、上場させることで多額の利益を生み出す企業に投資を行った関係者たちが儲けるための投資詐欺だったのではという声もちらほら見かけます。

IPOが一度頓挫した今、WeWorkに相応の価値があれば元の時価総額かそれ以上の値を付ける時がくるはずです。今後の展開から目が離せません。

投資総額2兆円、ソフトバンクグループとの関係

ソフトバンクグループは2017年、傘下のビジョン・ファンドという投資ファンドと合わせてWeWorkの運営会社であるWe社に約1兆円の投資を行っています。

ビジョン・ファンドは、サウジアラビアのサルマーン王太子などと共同で2017年5月20日に発足した総額約10兆円の巨大な投資ファンド。内訳はソフトバンク約3兆円、外部投資家が約7兆円。
ビジョン・ファンドからWeWorkへの出資額は約20億ドル(※出資額のソース:日本経済新聞)

さらにソフトバンクグループは2019年10月23日、合計約95億ドル(約1兆円)の金融支援を行うことを発表。これでWeWorkへ合計185億ドル(約2兆円)の投資を行ったことになり、WeWorkがコケたらソフトバンクにも影響が出て最悪倒産もありえるのでは?という説も出ています。

最適なタイミングでのIPOで売り抜けることができなくなった今、もはや引くことができない状況に陥ったのだと考えられますが、孫正義氏がこの局面をどう突破していくのか見ものですね。

WeWorkの会長職にはソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ副社長が就き、子会社化はしないとのことですが実質ソフトバンク傘下のような立場になっていくと考えられます。

TechCrunch Japanが10/25に公開した記事によると、マルセロ・クラウレ新会長は「WeWorkを救うために何をすべきなのか、それはまだ明確ではない」といった発言を行ったとのこと。文字通り受け取るのは早計ですが、まだ具体的な解決策は見つかっていないかもしれません。

内情が明らかになり暴落した時価総額が戻るとは考え難いため、WeWorkを立て直し黒字化して公開株式市場で投資に見合うだけの価値がつくまで粘るにしても相当な苦難が待ち受けていることでしょう。

2019年上半期だけで980億円の損失。WeWork決算から読み取れる赤字の内訳

WeWorkの連結財務情報および営業情報の要約

WeWorkの2019年上半期決算状況は下記のとおり。
資料上の単位はドル(千単位)なのでわかりやすく日本円で表記しています。

売上高(Revenue) 約1,660億円
拠点運営費(Location operating expenses) 約1,340億円
その他営業費(Other operating expenses) 約88億円
オープン前費用(Pre-opening location expenses) 約277億円
販促・広告費(Sales and marketing expenses) 約348億円
新市場参入費用(Growth and New Market Development Expenses) 約402億円
一般販管費(General and administrative expenses) 約423億円
減価償却費(Depreciation and amortization) 約278億円
営業赤字(Loss from operations) 約1,488億円

公表されている資料を見ると、最低限毎月必ず発生する「拠点運営費」「一般販管費」だけでも売上高を超えるマイナスになってしまっており、販促や広告費、新規拠点にかかるコスト、減価償却などが全くなかったとしてもWeWorkは赤字だとわかります。

ベンチャーといっても既に10年目を迎える企業でビジネスモデルとしてもテック系とは言えず殆ど不動産事業なので、赤字が許容されるにしても限度があるのではないでしょうか。

WeWorkをひとつのオフィスサービスとして見た場合、現状では膨大なコストをかけ続けながらも赤字のサブリース又貸しオフィス事業でしかなく、最高で約5兆円の時価総額がついたのはIPOで一儲けしようとしていた投資家たちの価格釣り上げ工作ではないかという世間の声はあながち間違っていないのかもしれません。

創業者である前CEOアダム・ニューマン氏の問題

これだけ大きな企業ともなると、企業の顔であるCEOの為人にも注目が集まりますよね。誰の目にもわかりやすいよう数字を中心に説明を進めてきましたが、少しだけ前CEOアダム・ニューマン氏のネタにも触れておきたいと思います。

創業者であるアダム・ニューマン氏はカリスマ性があり只者ではなかったようですが、「S-1」提出後に噴出した本人に関する問題はショッキングなものばかりでした。

WeWorkの株7億ドルをIPO前に売却していた件、自己保有するビルをWeWorkに貸して利益を得ていた件、WeWorkのCLO(回収の見込みが極めて低い粗悪な社債)を転売して利益を得ていた件などは株主の利益を阻害する背任行為に他ならず、代表として許されるものではありませんでした。

他にも薬物使用疑惑や数々の奇行、社内で頻繁に行われていたという差別やパワハラ問題などの告発もあり、さすがにそのまま企業のトップに居座り続けることはできなくなったのでしょう。

ソフトバンクグループのトップである孫正義氏は、アダム・ニューマン氏に出会って12分で投資することを決めたというエピソードがあります。人物に惚れ込んで投資を決めたのか、ビジネスモデルにだけ惹かれたのか、はたまた別の思惑があったのかは本人のみぞ知るところですが、先述したとおりWeWorkの今後は実質ソフトバンクグループの手に委ねられたといっても過言ではありません。

アダム・ニューマン氏は非常勤の会長となるだけでなく、多額の顧問料なども受け取るようで、この厚遇に従業員から反発の声が上がっています。彼が失墜させた企業の価値と株主たちの熱意や信用が回復する日はくるのでしょうか。

WeWorkの時価総額が回復する見込みはあるのか

WeWorkが上場に向け開示した資料を見る限りでは、かかっている経費を全て計上していない状態でも売上を上回る赤字を出し続けているサブリースの不動産事業という印象しかありません。ソフトバンクの株価が下がったりしている現状から多くの投資家も同じような目線で見ていると考えられます。

CEOの退任で刷新された経営陣はとっくにわかりきっていることだと思いますが、WeWorkの評価を一変させるためには黒字化するだけでなく、投資家がお金をつぎ込みたくなるほどの収益を生み出せる事業であることを示さなくてはなりません。

不動産事業で収益を改善する方法はいくつかありますが、自社所有ではない不動産のサブリースは経費を削減するか賃上げに手をつける必要があります。

WeWorkはもともとオフィスサービス業界内においては利用料が高い方であるため、相場を無視した賃上げを強行すれば入居率が下がる可能性がありテコ入れはできるだけしたくないでしょう。コストカットについては人員削減から手をつけていくと思いますが、広告宣伝費などを除いた固定費だけでも赤字の現状を見ると非常に厳しいのかなと感じます。

WeWorkに投資した方々にとっては、WeWorkはテック系、テクノロジー企業でなければならないのだと思います。理由は明白で、不動産事業とは比較にならないレベルで時価総額を釣り上げやすいからです。

ですが現状は、WeWorkにお金をつぎ込んだ人だけがテック企業だと言い張っているだけなのではないでしょうか。赤字のサブリース不動産事業であると認識された今、時価総額の回復は極めて困難であると言わざるを得ません。

可能であるならば、誰もが想像しなかったような奇跡を見てみたいですね。

WeWorkと同業他社のオフィスサービスにはどのような違いがあるのか

銀座シックス内観|WeWork
(引用:https://www.wework.com/ja-JP/buildings/ginza-six–tokyo)

WeWorkはレンタルオフィス・シェアオフィスなどを提供するオフィスサービス事業者です。自社で所有する物件ではなくいわゆるサブリース、噛み砕いて言うと転貸・又貸しという形式でサービスを提供しており、大多数の同業他社と同じような借りた不動産を小分けにしたり共用スペースをたくさんの人に貸し出すという形態でビジネスを行っています。

事業内容自体に真新しさはありませんが、とにかくブランド意識が素晴らしい。同業他社と比較した場合、圧倒的に優れているのはブランディングとコミュニティだと私は捉えています。

もっとわかりやすく言うと(少し言い方はよくないですが)意識高い系というか、オフィス全体のバリューやステータスを最優先したい人が好みそうなものをお金をかけてきっちり作り提供しており、コミュニティに関わることで横の繋がりを作りやすいといった付加価値がサービスにしっかりと盛り込まれているのです。

同業他社で競合しているのは価格帯やサービスの質が同等な「リージャス」になると思いますが、真新しさやオシャレ感とコミュニティを両立させているWeWorkが一歩抜きん出ているよう感じます(あくまでもオフィスサービス運営責任者としての所見です)。

運営側が企画・主催するイベントに参加できたり、異業種の個人や法人が同じオフィスで交流できるようなオフィスサービスは他社にもありますが、圧倒的な資本によるオシャレ感、規模感などと掛け合わせると同じレベルの競合はいないと言っても過言ではありません。

WeWorkの筆頭株主であるソフトバンクグループの孫正義氏は、WeWorkのビジネスモデルについて「模倣されると思ったがされなかった」といったような趣旨の発言をしたことがありました。

実際、同じ規模感で取り組めば赤字を年間約2,000億円垂れ流しながらオフィス事業を運営しなければならないリスクがあるので容易く真似できるものではありません。時価総額ほどの価値があったかどうかは疑問ですが、WeWork自体には素晴らしい価値があると私は思います。

あとはWeWorkは土地の選定から内装デザイン、サービス運営までを全て自社で行ってきている点も一般的な転貸オフィスサービス事業者とは異なる要素として挙げられます。

今後どう変化していくのか未知数ですが、現状ではお金に関する部分を一切見ずにオフィスサービスの質だけを見れば素晴らしい企業であることは間違いありません。

暴露記事とその信憑性について

最後に、この騒動を語る上で欠かせない「medium.com」に投稿された暴露記事「Is wework a fraud(WeWorkは詐欺か?)」について語って締めたいと思います。

この暴露記事は内部リークのようなもので、内情を知っている人物によって書かれたものだとわかるような要素がチラホラ含まれています。

中でもハーバードビジネスレビューでも議論された「コミュニティ調整金 EBITA」というWeWork独自の会計処理規則についての暴露は興味深く、「設備費と広告費という2大支出科目を隠すため」に設立されたもので収支報告やS1に記載された支出も誤っている、といったものでした。

ビルとコミュニティ運営に必要な賃料や入居関連経費、 光熱費やネット利用料、人件費や設備費などのWeWorkにとって必須となっている出費が一切赤字として計上されていないそうで、本当の数字を全部出したら一体どうなってしまうのか……考えただけでも恐ろしいですね。

他にも創業者2人が事前に買っておいた「We」という商標をWeWorkに600万ドル(約6億5千万円)で売りつけて金儲けをした件について語っていたり、WeWorkの時価総額が470億ドルまで跳ね上がったのはひとりの日本人(ソフトバンクの孫正義氏が実名で出てくる)が9回も投資したからで時価総額が約5兆円だと言っているのは孫正義とアダム・ニューマンだけだとか、IPOを早めたのは孫正義から追加で引っ張る予定だった資金が出てこなくなったからだとか、色々と言いたい放題でした。

私が個人的に一番興味を惹かれたのは、「WeWorkが一番お金をかけているのは広告である」という部分です。サクセスストーリーや煽りタイトル「時価総額470億ドル」を使った有料の記事広告を多く書かせていたりしたそうで、全部がコンテンツマーケティングではないでしょうけれど、これだけの企業になってもステマや提灯記事に大金をつぎ込んでいるんだなぁと感心しました笑。

元記事は削除されてしまっているためもう読むことはできませんが、暴露記事公開後、ほどなくして前CEOであるアダム・ニューマン氏は辞任。事実が多分に含まれていたことが証明されたと考えるのが自然な流れですね。

まとめ

WeWork(ウィーワーク)問題は、ひとつのオフィスサービス事業が上場できず資金繰りに失敗し破綻しかけたといった単純な話ではなく、投資ファンドや多国籍企業が関わっている闇が深そうな案件です。

このような問題が発覚しても、オシャレで最新感を味わうことができるWeWorkを今後も利用したいという起業家や法人が0になることはないと思います。WeWorkの利用を検討している方は、借りる前に「拠点に法人登記等をして長期利用するかどうか」をよく考えたほうがいいでしょう。WeWorkに何らかの問題が発生した場合、日本から撤退するかもしれないし、最悪サービス自体がなくなる可能性も0ではありません。

短期やスポット的な利用または長期利用でもすぐに移転できるよう柔軟に対処できるのであれば気にする必要はありません。これから借りようとしている方は心に留めておいてくださいね。

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