これまでに数千超の企業や個人事業主をサポートしてきた「METS OFFICE」は、運営責任者・小畑氏が初めて事業に携わった時、会員数はわずか10件程度だった。
本記事では小畑氏に様々な質問をぶつけ、METSオフィス事業初期からの変革、オフィスサービス事業についての思考、会員様への想い、今後のビジョンなどを探った。
1拠点のみ、会員10件からのスタート
━━METSオフィスは2012年にサービスを開始したとのことですが、小畑さんは当初から責任者として運営されていたのでしょうか?
小畑:
私はMETSオフィスの運営開始から半年後の2013年1月に入社して、まもなく運営に携わるようになりました。当時のMETSオフィスはまだ拠点が新宿三丁目の1拠点しかなく、レンタルオフィスは8部屋のうち5つ、バーチャルオフィスの契約は5件のみという状況だったんです。
数字だけだと悲惨に見えるかもしれませんが、自社所有ビル内で運営していたためその時点では赤字にはなっていませんでした。かといって積極的に拠点を増やすような動きはなく、先のことは特に決まっていなかった。ただ、事業を広げていきたいというビジョンは最初からあったと聞いています。
当初、レンタルオフィスとバーチャルオフィスはどちらも一般的な賃貸物件レベルの審査をしていたそうで……今よりも圧倒的に入りにくいオフィスサービスだったと思います。当時お申込みいただいたお客様には申し訳ない限りです。
「これ、成り立つのかな」
━━運営開始時の問題や、これまで取り組んできたことを教えてください。
小畑:
最初は「これ、成り立つのかな」と考えましたね。個室を貸し出すレンタルオフィスは別として、法的に問題ないことは理解していましたが不動産業歴約10年の私でも当時のバーチャルオフィスは怪しいものだと思っていましたから(笑)
バーチャルオフィス自体、世間的に今ほど認知度も信頼性も無かった。METSは新規事業だから、既にオフィスサービス業界内では名が知られていたリージャスのような知名度もありませんでした。
当初は広告予算も殆どない中でやれることは限られていましたが、絶対にここだけは外せないというものを最初に決めました。レンタルオフィスはともかくバーチャルオフィスのイメージはかなり悪い。だからこそ、少なくともMETSオフィスは一般的に怪しいと思われるような要素をなくしていこう、と。
今ではお客様からよく「METSはちゃんとしている」と声をかけていただけるようになりました。私が携わってから出来た拠点にはエントランスやラウンジをつくってバーチャルオフィス会員であってもオフィスの存在を感じられたりと、格安バーチャルオフィスでも質にこだわってきたことが実を結んだのだと思っています。
ただ、これで完成というわけではありません。働き方に多様性が求められる時代になり、レンタルオフィスとバーチャルオフィスの需要はより高まっていくでしょう。時代の変化に置いていかれないようなサービスを今後も考えていく必要があります。
「バーチャルオフィス=怪しい」はもう時代遅れ
━━METSオフィス事業の成長には、ここ数年で特にバーチャルオフィスの需要が高まったことが関係しているのではないでしょうか?
小畑:
そうですね。オフィスサービスの需要が増えた一番の理由は、働き方に多様性が出てきたことだと思います。経済的な不安から副業を始めたり、自由を求めてフリーになった起業家の方などが増えてきたということです。
それ以外の要因としては、賃貸で登記不可物件が増えてきたこと、グーグルマップで自宅住所が容易に特定されるようになってしまったこと、ユーザーのリテラシー向上などが考えられます。
住民票などと違い登記は変更にお金がかかるためやらない人も多く、以前の住民宛の郵便物などが届いてトラブルになることが少なくありません。物件オーナーは登記されることを嫌がる方がもともと多かったのですが、働き方に多様性が出てきた影響でトラブルが増え、禁止と明記した物件が増えてしまったのでしょう。
自宅住所の特定については昔からあったリスクですが、今は直接現地に行かなくてもマップで建造物の外観まですぐに確認できてしまいます。例えば女性がネットショップなどの副業を行うとして、自宅住所を使うリスクがどれほどのものであるかは想像に難くないでしょう。登記の有無に関係なく、今は自宅住所をビジネス利用するのは避けたほうが賢明ですね。
自宅住所をビジネス利用してきた方は、オフィスにコストをかけることを全く考えていないか、頭の片隅にはあるけどできればコストをかけたくないか、ほぼどちらかに当てはまります。このような方々に対応できるのは格安のオフィスサービスだけと言っても過言ではありません。
あとは単純に、個人だけでなく法人のリテラシーが高まり、ビジネス用の住所だけを借りるという形態が認知され受け入れられてきたことですね。法人の支店としてバーチャルオフィスを利用したいというご要望は数年前とは比較にならないほど増えています。
大手不動産事業者がオフィスサービス事業に参入してきたことも非常に大きかったです。東急などの大手も参入してきている今となっては「バーチャルオフィス=怪しい」はもう時代遅れと言ってもいいのではないでしょうか。
METSオフィスは「安くてもこだわりたい」お客様に向いている
━━METSのバーチャルオフィスはどのようなお客様に利用されているのでしょうか?
小畑:
METSオフィスのお申込みデータをまとめてみると、他社とよく比較して、安くてもこだわりたいというお客様に選んでいただけていると感じています。
現地で内覧されるお客様は、既に申込の意思を固めているケースが非常に多いのも特徴的です。直接見てもらえればほぼ申込に繋がるクオリティのバーチャルオフィスであることは、遠方にお住まいで郵送契約しかできないというお客様にとっても安心できる材料になるのではないでしょうか。
業種については多種多様で、ひとことにまとめるなら実業(生産・流通・販売などの過程における事業全般)が一番多いです。バーチャルオフィスと聞くとウェブ系の利用者が多いという印象をお持ちの方が多いようですが、それだけということは決してありません。士業、芸能関係、各種コンサル業、不動産管理、メディア、出版業など多種多様なお客様にご利用いただいており、特定の業種に偏っているということもありません。
行政書士や司法書士の先生が実際にバーチャルオフィスを利用していると言っても信じない方もいらっしゃるかと思いますが、今はそういう時代です。個室やフロアを無理して借りなくても真っ当なビジネスを営むことはできるということを、もっとたくさんの方々に知ってほしいですね。
競合はいない
━━オフィスサービス事業でライバルや競合だと考えている会社はありますか?
小畑:
ローンの支払いもない自社所有ビルでの運営、無駄のないプランという特徴から見れば、競合はいません……というのも面白くないのでいくつか挙げましょう。
レンタルオフィスだけで考えると、多くの拠点を自社所有しているレンタルオフィスの天翔オフィスさん。バーチャルオフィスでは、一部拠点を自社所有しているカスタマープラスさんですね。価格面と付随するサービスはアントレサロンさん。参考になります。
バーチャルオフィスでは、METSオフィスと近いのもあってアントレサロンさんと比較する方は非常に多いです。ただし、どちらから見ても競合ではないと思います。
理由は、自社所有ビルでの運営と転貸による運営で形態が全く違うし、こちらは無駄がない(悪く言えばオプションが薄くイベントなども現状ない)、アントレサロンさんはシニア向けの起業家支援などがしっかりしているといった特徴があって単純に比較できないからです。
借りる側の視点でも、単純にサービスや価格だけでなくそういった面も見てほしいし、お客様全員がそういう目で選ぶようになればいいなと思っています。うちが一番と言いたいわけではなく、個々のお客様によって一番都合が良く使い勝手の良いオフィスサービスは異なるからです。
コストカットしつつ、設備にはお金をかける
━━METSオフィスの強み、他社との差別化やメリットについて教えてください。
小畑:
METSオフィスのメリットと言えば、やはり自社ビル直営ですね。自社所有物件内でオフィスを運営しているので、一般的な転貸オフィスよりも様々なコストが抑えられています。
自社ビル直営だからできた施策のひとつに大幅なコストダウンがあります。METSオフィスは昔、電話サービスなどが固定費に含まれていて月額7000円~だった時期がありましたが、基本セットに不要だと考えられるものは全て切り離して値下げしました。
電話サービスなどのオプションはオフィスサービスにとって重要ですが、特にバーチャルオフィスでは使わない方も多い。基本セットに含めるとお客様が損するケースが出てきてしまいます。そういった制約をいくつか消して気軽に使える価格帯まで下げました。
都心のそれなりに良い立地条件でも安く提供することで、より多くの方々に利用していただく。これが社長のインタビュー記事でも言われていた社会貢献にも繋がっていくと考えています。
あと、安くてもとにかく怪しくない小綺麗なオフィスにしたいという思いでやってきました。内装にはできるかぎりの範囲でこだわり、かなりのお金(地方で戸建てが建つ位)をかけています。また、各拠点には定期清掃を入れたりとメンテナンスにもコストをかけていますね。
ビルオーナーは管理・維持費を嫌がる人も多いけれど、社長はそういう大事なところにコストをかけさせてくれます。サービス利用料が高いところなら綺麗で当然でしょうけれど、安くてもきれいであるというのはかなりの強みですしお客様にも喜んでいただけるのではないかなと思います。
METSオフィスのデメリットは……
━━率直に聞きます。METSオフィスのデメリットについて教えてください。
小畑:
デメリットは、基本セット以外のサービスがオプションで外部と契約する必要があること、他社にあってうちにはないオプションがあること、受付が24時間ではないことなどですね。
ただ、それらはお客様のコストを削減するためには必要不可欠。可能なら用意したいけれど、やると使わない人のコストが上がってしまうので出来ないものでもあります。
お客様の声を聞きながら、ご負担いただくコストを上げずに出来る施策については今後も考えていきます。
運営してきてよかったこと、辛かったこと
━━これまでMETSオフィスを運営してきた中で、よかったこと、辛かったことを教えてください。
小畑:
たくさんの方々に使ってもらえるサービス事業に取り組めていること。
あと、会員様の事業が育っていくのを見られるのは嬉しいです。
よかったというだけでなく、何にも代えがたい経験になっています。
辛かったことは特にないですが、前例がないことに取り組んでいるので大変です。
仲良くなった人が事業拡大などで出ていってしまうと、嬉しいけれど寂しい。
辛い、とは少し違いますが色々な感情はありますね。
もっとこうしたい、ああしたいといったビジョンがあっても主にコスト面の問題などで実現できないものが多いこと。これは辛いことかもしれません(笑)
METSオフィスに今後追加されるサービス
━━METSオフィスの展望や、今後追加される予定のサービスについて教えてください。
小畑:
今後は、会員様同士がマッチングできる手軽に使えるサイトを公開予定です。会員様の利用は基本無料で、固定費上乗せやマッチング仲介料を中抜きといったことはありませんのでご安心ください。
それに付随してイベントなども行っていく予定ですが、コスト面との戦いになるのでそちらは準備にお時間をいただくことになりそうです。(こういうイベントを企画したいとかご要望があれば私宛にご相談ください)
弊社はこれまでに会員様やテナント様と不動産、内装、看板、グーグルストリートビュー、ウェブ制作、フラワーアレンジメント、フィットネス事業などの案件でお仕事をさせていただいたことがあります。今後新しい案件が出てきた際、会員様に頼める機会があればお願いしたいと思っていて、そういった繋がりも会員サイトを通じて作っていければと考えています。
METSの会員様限定なので狭いコミュニティになりますが、クラウドワークスやココナラのように機能させたいです。といっても限定されたコミュニティで、そのようなサイトでアクティブな会員様がどれだけいるか未知数ですし、基本無料でも何か付加価値がないとそもそも動き出さないのではないかと考えています。
オンラインサロンのような狭いコミュニティですけれど、METSには社会貢献をするという理念があります。そして会員様には同じMETSの会員であり、事業として取り組んでいるという信用があります。これらはある意味METSだけにしかない特徴ですから、活用していかなければいけませんね。
オフィスの審査に落ちない秘訣
━━バーチャルオフィスやレンタルオフィスの審査に落ちないための秘訣を教えてください。
小畑:
審査の秘訣について語るとものすごく長くなってしまうので、詳しくは過去に私が書いた記事をご確認ください。バーチャルオフィス、とタイトルにありますがレンタルオフィスでも基本は同じです。最低限のことをしておけば落ちる確率を下げることができます。
⇒ バーチャルオフィスの審査に落ちる条件6選
⇒ バーチャルオフィスで審査落ちとさせていただいた案件の話
バーチャルオフィスでも銀行の法人口座は作れる
━━バーチャルオフィスやレンタルオフィスでは銀行の法人口座が開設できない、というのは本当なのでしょうか?
小畑:
まずはじめに言っておくと、METSオフィスの会員様の中には三井住友、UFJ、みずほなどの大手都市銀行でも法人口座を作れている方はいらっしゃいます。さらに言うと、銀行系クレジットカードを作っている方もいらっしゃいます。レンタル・バーチャル関係なく、です。
銀行の法人口座については本当によく聞かれることが多いのですが、相談を受けた時は、作りたい銀行にまず自分の足で行って質問してくることを推奨しています。
この業種で作れるのか、と銀行に前もって聞いておく。これが一番手間を省けます。準備している段階ならざっくばらんに聞くことができます。
このバーチャルオフィスだったら絶対に作れる、なんて都合の良いものはありません。申請する人も、事業内容も資本金もまるで同じというわけではないのですから当然です。無いものを探すのではなく、その時点の条件でも法人口座を開設できる銀行を探したほうが現実的です。
取引実績、事業概要が大事なのは言うまでもありませんが、取引実績だけないという新設法人もあるでしょう。取引実績がない場合は選り好みせず、比較的審査が優しいと言われている楽天銀行などで口座開設して、取引実績を作ってから改めて挑めばいいだけです。
銀行によっては、ガイドラインで「この業種はNG」だと教えてくれないけど決まっているところがあります。その中にバーチャルオフィスという条件があったらダメだから諦めるしかありません。信用金庫などは厳しいところがあるようです。
一般的な貸し事務所を借りて会社を立ち上げても銀行で口座を作れなかった、という事例を聞いたことがあります。バーチャルオフィスだからダメというわけではなく新規事業自体厳しいこともあるようなので、まずは一度目当ての銀行に足を運んでみましょう。
運営責任者・小畑からお客様へのメッセージ
━━最後にMETSオフィスの会員様と、今後会員になる予定のお客様へメッセージをお願いします。
小畑:
上昇志向がある方は、うちを踏み台にして飛躍していってほしい。
のんびりとやっていきたいという方は、マイペースで末永くお付き合いをしていきたいです。
METSオフィスは解約率がかなり低く、とてつもない数のビジネスパーソンが日々活躍しています。立地的にもコスパ的にも、ひとつ気に入った住所を借りてじっくりとビジネスをやりたいという方には最適な環境だと思います。
弊社は60年やってきて、100周年に向けて頑張っている最中です。今後も目まぐるしく変わっていく社会の中で、形はどうあれ、お互いにとって良い関係でいられたらいいなと思っています。
あと、METSオフィスはいつでも果敢に挑戦する方からの提案を待っています。
直近だと税理士の方から「創業の相談をしたいという方がいたら紹介してほしい」、ビールサーバーを扱っている会社から「飲食店を経営している方がいたら紹介してほしい」、不動産会社から「不動産を買いませんか!」などと声をかけられたりしています。
これらは提案というか営業ぽい事例ですね(笑)
もし何かありましたら、お気軽に小畑までご連絡ください。
近日オープン予定の会員サイトもよろしくお願いいたします!
━━ 本日は貴重なお時間を頂き有難うございました。
編集後記
基本的に世の中では良いモノよりも有名なモノが売れる。オフィスサービスのような、事件性がない限りシェアされたりバズったりすることが殆どない商材は特に難しい。
一般的に怪しいというイメージを持たれがちなオフィスサービスのひとつに過ぎなかったMETSオフィスにはサービス開始時から独自の強みがあった。だが広告予算が殆どなかったため「良いモノ」として広く認知してもらうまでには時間が必要であるという弱みもあったのだ。
お客様や社会から一定の信用を得るのは容易ではないが、自社所有ビルで利益ほぼ度外視の運用ができれば時間的な問題はクリアできる。これだけでも毎月オーナーに賃料を支払う必要がある一般的な転貸オフィスサービスには絶対に模倣できない。
小畑さんはそれを見抜き、自身が最初に感じた「怪しいと思う要素」を無くしていくというユーザー目線の対策から始め、長期目線でMETSならではの強みを活かしたサービスへと育て上げた。
METSオフィスはまだ成長過程にあり満足していない、もっと会員様のためにやりたいことがあると小畑さんは言っていた。METSが有名で良いモノとして周知される日は、そう遠くない未来に訪れるかもしれない。
最後までお読みいただき有難うございました。
インタビュアー:TK(METSオフィス会員)